第4回:運動計画と食事の注意点について


2017 年 12月

スポー ツ栄養のコラム

 

「スポーツと栄養」
第4回:運動計画と食事の注意点について

 

  寒くなってくると運動をする機会が減る方もいるのではないでしょうか?運動を始めてやっと継続できたところでストップしてしまうと次に運動を始めることがなかなかできないこともあります。また、寒いから…あたたかくなってからと引き延ばしにしていると運動する機会を失っていく場合もあります。運動を継続している人も今から始める人も是非、年間の運動計画を立ててみてはいかがでしょうか? 

 

1)運動計画の立て方は?

 

 運動計画と言われると、「大変そう」、「面倒だな」と思うかもしれませんが大切なことは「自分が続けることのできる計画」と「計画を常に見直す」ということです。そのためにまず、1年後の目標を考えるとよいでしょう。例えば、マラソン大会の完走や何m泳げるようになるなどです。

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 運動計画の基本は、「続けられること」なので、今から運動を始める人は、生活の中で身体を動かす機会を多く作るとよいでしょう。通勤時は階段を利用する、電車では座らない、掃除に雑巾がけをする、ラジオ体操をするなどです。また、万歩計などをつけて自分が1日にどのくらい歩いているか数値で確認するのもよい方法です。日常生活の延長上で身体を動かすことを1ヵ月ほど意識し続けられたら、その習慣を続けながら、次の約3ヵ月間は、日常生活以外に運動の時間を作ります。10分くらいからでも構いません。これも習慣になるよう時間や頻度は自分の負担にならないよう気を付けます。ここで具体的な目標を考えておこなうのもよいと思います。次の3ヵ月は、前の3ヵ月を振り返り、自分が立てた計画が予定通りなら時間や頻度を増やすことや前より高い目標を設定します。計画が予定通りでない場合は、初心にもどり、日常生活の中で身体を動かす習慣から見直し「継続できる自信を取り戻す」こともよいでしょう。
 半年くらいすると自信がついてくる人または、続かなくてやめようかなと思う人に分かれることがあります。そのような時は、1年後の目標を確認すること、家族や周りの人に話すことや、一緒に運動をしてくれる人を探すのもよいでしょう。
 運動計画とは少し違うかもしれませんが、運動を始めるに際には「シューズ選び」も大切なポイントになります。運動シューズが合わなければ足が痛くなり、もう動きたくないということになりかねません。自分の足に合ったものを選び、楽しく運動を始められると気持ちがよいですね。

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2)食事の注意点

 

 いつもより活動量が増えてきたら、より水分補給を意識します。「喉が渇いたから飲もう」ではすでに体内で水分が不足し始めており遅いです。喉が渇いたと感じる前にこまめに水分を補給することが大切です。起床後、食事中、通勤中、仕事中、家事の合間、入浴前後、就寝前など運動をする以外のときでも気を付けましょう。
 食事では活動量にあわせた量を摂るようにしましょう。個人によって身体で起こる代謝や活動量は違うので、自身で管理することが大切です。管理する方法の一つに体重を毎日決まった時間に測ることをお勧めします。自分の中でたくさん動いたからたくさん食べても大丈夫と思っていても、考えていた以上に運動した消費エネルギーが低いことがあります。運動による消費エネルギーより食事からの摂取エネルギーが高い場合が続くと体重は増えていく一方です。それを把握するのに体重測定はとても重要な役割を果たします。運動習慣とセットで体重測定も習慣化できると運動計画も立てやすいかもしれませんね。
 活動量が増えてどんな食品を多く食べればよいか?と考えますが、大切なのは1日の中でバランスよく色々な食品を食べることです。私たちは、○○だけを食べていたら体調がよくなるということは考えにくく、色々な栄養素をとることにより身体は作られています。まずは現在の食事で「偏り」がないか確認して、色々な食品を食べることを意識しましょう。

 

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 最後に、運動を始めたばかりの人は筋肉痛や足をつりやすくなることがあるかもしれません。筋肉痛は運動によって筋肉が損傷することによって起きているので、たんぱく質を摂り筋肉を修復して、身体の中の活性酸素を取り除くことが重要です。身体への吸収が早い鶏肉や抗酸化力の強い青魚がおすすめです。足のつりにはカルシウム・マグネシウムを意識的に多く取り入れると予防できます。両方が豊富に含まれている食品は桜エビや干しエビです。他にはほうれん草、海藻類、ナッツ類、ゴマがあります。どれも珍しい食品ではありませんので是非意識して摂ってみてください。

 

コーディスポーツ

管理栄養士・公認スポーツ栄養士

寺尾 美佳

 

 

第3回:運動と免疫機能の関係について


2017 年 9 月

スポー ツ栄養のコラム

 

「スポーツと栄養」
第3回:運動と免疫機能の関係について

 

 生活の中に適度な運動を取り入れ続けることによって身体の調子がよいと感じることはありませんか?適度な運動は感染症のリスクを減らすと言われています。頻度にもよりますが、マラソンなどの激しい運動や過酷なトレーニングは適度な運動と比較すると感染症を引き起こしやすいとも言われています。

 

1)運動と感染症予防の関係

 

 身体の中の免疫機能が高いと感染症予防につながりますが、まずは皮膚・粘膜などで防 御できるかどうかも重要なポイントです。スポーツ選手は皮膚・粘膜の感染症が多いと言 われています。その理由として、運動による高温、低温、乾燥、湿潤、紫外線、圧迫、外 傷、土壌などの外部環境からのストレスを受けることが多いからです。また、運動中には 骨格筋への血流が促進される一方で、皮膚・粘膜・内臓への血液循環が抑制されるため、 それらのバリア機能が抑制されて病原体が侵入しやすくなることからです。 運動の強度が高くなればなるほど呼吸数が増加し、口呼吸が主体となります。そうなる と微生物が気道深部まで到達しやすくなります。鼻水や咳、淡がでることによって取り込 まれた微生物を外にだすことになりますが、運動中には気道粘膜が乾燥・冷却されて、粘 液の粘度が増すことにより病原体を排除しにくくなり感染症のリスクにつながると言われ ています。激しいトレーニングを継続している選手は一般人と比較して、くしゃみ・鼻水、 咽頭痛を訴える人が多いという調査結果もでています。このようなことから、適度な運動 を継続しながら、運動後の手洗い・うがいが感染症予防にはとても大切だということです。

 

2)健康な身体を作るための運動習慣と食事のポイント

 

 運動を継続して習慣化していくには、徐々に運動量を増やして身体への急激なストレス 反応を避けることが免疫抑制や筋の炎症を予防することにつながります。個人差はありま すが、適度な運動の影響として風邪の症状の発生頻度が減少することや癌予防でも効果が 現れているとの報告もあります。 運動と一緒に食事にも気を配ることにより、体調を崩さず継続して運動をおこなえます。 継続しておこなうことにより免疫力も高まります。ウイルスに対する身体の抵抗力が弱っ ている時に風邪をひきやすくなります。風邪から症状が悪くなることがあるので日頃から 予防を心がけたいです。風邪予防のためにはビタミン A とビタミン C を積極的に食事の中 に取り入れましょう。ビタミン A は気管の粘膜を正常に保つ働きがあるため、不足すると 風邪のウイルスが気管の粘膜などから体内に侵入しやすくなります。ビタミン A を多く含 む主な食品はレバー、卵黄、チーズ、人参です。ビタミン C は体内組織の細胞と細胞を結 びつける働きのあるコラーゲンを作ります。コラーゲンが不足すると細胞の結合がゆるみ 抵抗力が低下し、ウイルスに感染しやすくなります。ビタミン C を多く含む主な食品はい ちご、オレンジ、ピーマン、キャベツ、じゃがいもです。ビタミン A,C ともに多く含む主 な食品は小松菜、ほうれん草、かぼちゃ、ブロッコリーです。 運動後は適切な栄養補給とともに休養をしっかりとることが大切です。

 

【参考図書】

・スポーツ現場に生かす運動生理・生化学,編者:樋口 満

・ウイダー・ニュートリション・バイブル

 

 

コーディスポーツ

管理栄養士・公認スポーツ栄養士

寺尾 美佳

 

 

 

第2回:運動による疲労について


2017 年 6 月

スポー ツ栄養のコラム

 

「スポーツと栄養」
第2回:運動による疲労について

 

 皆さんは運動をしていますか?運動をする目的は「試合で勝ちたい」、「体重を落とした い」、「健康のためになど人それぞれ違うと思います。運動の強度や時間にもよりますが、身体を動かすと「爽快感」や「疲労」を感じます。疲労については運動後に動けないくらいの疲労から運動自体が気分転換となるような心地よい疲労までこれも人それぞれ感じ方が違うと思います。

 

1)疲労の原因とは?

 

 「疲労」=「乳酸が溜まってきた」と考えている方がいるかもしれませんが、運動生理学上、乳酸は私たちが身体を動かすためのエネルギー源でもあります。もう少し詳しく説明すると、私たちは運動することによってエネルギーを消費しています。アスリートになるとこのエネルギー消費が一般の人より多いため、それだけ多くのエネルギーを摂取しなければいけないことになります。エネルギーは主に糖質、脂質から作り出され、それらは血 液、筋肉や肝臓、脂肪組織に貯蔵されています。私たちの血液中にある血糖(以下、グルコース)はほぼ一定に保たれています。グルコースがエネルギー源として使われて血糖値が低 下すると、肝臓に蓄えられているグリコーゲンが分解されてグルコースになり血糖値が上昇する身体の仕組みになっています。乳酸は何かというと、主なエネルギー源の「糖質」を利用する過程でできるエネルギー源物質です。

 運動による疲労原因は多くの要因が重なって現れています。近年、注目されているのが「リン酸の蓄積」です。リン酸は強度の高い運動(マラソンなど)で多くできると言われています。また、筋収縮の働きを悪くしていることもわかっています。通常筋肉内はカリウムが多く、血液にはナトリウムが多くあります。これはエネルギーを使ってこのような濃度差というものを作り、このため体内が電気的性質をもつことによって神経の刺激が伝わり筋肉が収縮して動かすことができます。ところが、強度の高い運動をしていると筋肉からカリウムが漏れ出し、ナトリウムが筋へ流れ込むことで筋肉の収縮が悪くなりこれが疲労の原因の一つとなります(図 1)。他にも、体温が上がることや活性酸素など色々なことが複合して疲労を起こしているということです。そして自分の状態にプラスして暑熱下や寒冷化での疲労も考えられます。

 また、乳酸が蓄積することにより、カリウムが筋肉から漏れ出すことによる筋収縮低下が抑えられることも報告されています。乳酸ができることは早くエネルギーを生み出したり、カリウムが筋肉から漏れ出すことを抑制したりと、乳酸ができるから疲労するということではなく、疲労するような運動をしているので、それを押さえようとして乳酸ができているということです。それが結果的に疲労している時と乳酸が多く蓄積している時が一致していたということです。

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2)活性酸素とは?

 

 疲労の原因の一つである活性酸素。テレビや雑誌などで目にすることが多いかと思います。身体に取り込まれた酸素のうち、約2%は金属イオンや酵素の影響を受けて反応性の高い活性酸素になります。この反応性の高い活性酸素は他の物質と結びつく力がとても強く、結びついた物質から電子を奪う(酸化する)性質があります。活性酸素から電子を奪われた物質は?安定になり、今度はその物質自体が反応性の高い活性酸素となり、また他の物質から電子を奪って安定化しようとします。次々と反応性の高い活性酸素が身体でつくられていきます。活性酸素が生じるのは、生きていく以上避けられないことですが、私たちの身体の中には抗酸化物質が備わっていて普段は活性酸素を抑える役割があります。しかし、運動・精神的ストレス・喫煙・アルコールの摂りすぎなどで身体に負担がかかったときにはたくさんの活性酸素が発生します。
 運動量が多くなると活性酸素が増えますが、その働きを抑えてくれる抗酸化物質は食品からも摂取できます。ビタミン A(緑黄色野菜、レバー、魚介等)、ビタミン C(野菜、果物、イモ類等)、ビタミン E(ナッツ類、緑黄色野菜等)、などの栄養素や、カロテノイド(トマト、人参、かぼちゃ等)やポリフェノール(ココア、ブルーベリー、大豆、緑茶等)などの機能性成分は抗酸化機能が期待できます。普段の食事からバランスよく摂り入れることが望ましいです。

 

3)長く続けるために

 運動はすぐ疲れるから、活性酸素が増えるからと言ってやらないのではなく、どのような目的のために行うかを考えて取り組むことが大切だと思います。今回は運動による疲労についてお話しましたが、自身で感じる疲労感という感覚も大切にしてみましょう。自分の体調や疲労度を把握しておくことが長く、楽しく運動を続けるためには重要なことだと感じます。何事もバランスが大切です。

 

【参考図書】
・スポーツ現場に生かす運動生理・生化学,編者:樋口 満
・ウイダー・ニュートリション・バイブル

 

 

コーディスポーツ

管理栄養士・公認スポーツ栄養士

寺尾 美佳

 

 

 

第1回:運動・スポーツ時の水分補給について


2017 年 3 月

スポーツ栄養学のコラム

 

「スポーツと栄養」
第1回:運動・スポーツ時の水分補給について

 

皆さんは運動・スポーツをするとき何をどのくらいの頻度で飲んでいますか?

 

1)発汗について

 

 身体を動かせば汗をかきます。汗をかくことは、暑熱環境下の運動・スポーツ時にはとても 大切な働きです。汗をかくと皮膚の表面で蒸発するしくみになっています。汗が蒸発するとき に皮膚表面の熱を奪い、体温を下げようと働きます。

これを「有効発汗」と言います。

しかし、すべての汗がこのように蒸発するわけではなく蒸発する前に身体の表面からしたたり落ち ることもあり、これを「無効発汗」と言います。

汗の蒸発の度合は、外気の湿度に影響されます。

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湿度が高いほど熱の放散が制限されるため、無効発汗が多くなります。

 運動・スポーツ時には湿度を確認してから始めるとその日の汗のかき方にも違いを感じられるかもしれません。

また、体調のバロメーターとして確認することで、運動・スポーツの質も上がるのではないでしょうか。

 

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2)喉の渇きと水分補給について

 

 私たちは日常生活を送っている際も身体から水分 が失われており、「喉の渇き」を感じることによって調整しています。

運動・スポーツ時には「喉の渇き」 が遅れて表れると言われています。それは、体内の水 分が丌足してもすぐに喉が渇くわけではなく、汗で失った水分の回復が遅れることを指し、脱水になりやす い状況となります。

ですから、運動・スポーツ活動中 は意図的にこまめに水分補給する必要があるということです。

 

3)脱水と水分補給について

 

 「脱水」が運動パフォーマンスを低下させることは、数多くの研究で証明されてきました。では、「脱水」にならないよう、どのような水分補給が望ましいかということですが、 運動・スポーツ時には「喉の渇き」が遅れることを考慮し、飲みすぎを危惧するより脱水予防が重視されるようになりました。

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推奨される飲水量の目安は、運動・スポーツ前後で 「体重減少が 2%を越えない程度の水分摂取量」とされています。

毎回、体重を計測できる環境にあればよいのですがなかなか容易ではないことも考えられます。さらには個人の体重や元々の発汗 量なども考慮する必要があります。

まずは、自身の「喉の渇き」 というものを意識して運動・スポーツ活動を実施してみることを お勧めします。

 

4)低ナトリウム血症について

 

 近年のマラソンブームで様々なマラソンイ ベントが開催されており、「マラソンをはじめた」という方もたくさんいるかもしれません。

マラソンやトライアスロンなどの長時間スポ ーツは適切な水分補給が行われないと熱中症 や脱水が起こることが多いですが、脱水とは反対に水の飲みすぎで血液中のナトリウム濃度が低下する低ナトリウム血症の場合もあります。

水中毒とも言われ、細胞の水が過剰になる 現象です。

発症例では、やはりほとんどが発汗量以上に水を飲みレース後に体重が増えて いたケースが多いそうです。

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長時間のスポーツ活動では、熱中症のリスクとともに、飲みすぎによる低ナトリウム血症のリスクも認識し、普段から自身にあった水分補給を知っておくことが大切です。

 

 

5)胃の通過速度から考える水分補給

 

 ここまで運動・スポーツ時の発汗・脱水症状から水分補給の重要性について述べてきました。

最後にどのような内容のものが好ましいかということですが、飲んだ水分は、小腸、 大腸から吸収されて、胃では通過するだけで吸収されません。しかし、胃を通過する速度は様々なものの影響を受けることがわかっています。影響を受ける中で、甘い飲み物、温かい飲み物ほど胃の通りは遅くなります。したがって、胃の通過する速度から考えた運動・ スポーツ活動中の飲料として好ましいものは、飲料として糖質の濃度が低く(甘すぎない 飲み物)、冷たいものが胃の吸収が早いということです。

胃の通過速度は個人差が大きいこ とと、飲んだ水分が胃にたまりやすい人もいるので、飲む量を控えるなど個人で調整する必要はあります。また、冷たすぎる飲み物はお腹をこわす人もいるので気を付けなければいけません。やはり日頃から自分にあった水分補給というものを意識して、調整し、試合などの大切な日に向けて考えることが重要ということです。

 

6)まとめ

 

 これまでなんとなく運動・スポーツ時はスポー ツドリンクを飲めばよい、熱中症予防のためにた くさん飲めばよいと思っていた方がいるかもしれません。

しかし、一度水分補給の目的を考え、 自身の発汗量を知り、どれくらいの水分量を補給すれば運動・スポーツを楽しむことができるのか、 大切な試合の日に自分の力を発揮できるのかということを考えるきっかけとなれば幸いです。

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※参考図書 スポーツ現場に生かす運動生理・生化学,編者:樋口 満

 

コーディスポーツ

管理栄養士・公認スポーツ栄養士

寺尾 美佳

 

 

 

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